動脈硬化の食事療法

動脈硬化を予防・改善するための食事療法のポイントについて。

動脈硬化を引き起こす原因は“高血圧”、“高脂血症”、“糖尿病”、“肥満”、“喫煙”、“ストレス”、“加齢”などが挙げられ、予防したり改善を目指すためには生活習慣の中で【食事】【運動】【禁煙】が大切な要素となります。

ここではどのような食事内容が動脈硬化の進行を早めたり、その逆に予防や改善に繋がるのかといったことにポイントを置き、毎日の食生活を見直す上で意識したい項目を幾つか取り上げてみました。

適切なエネルギー摂取量を把握し、食べ過ぎに注意する

食事動脈硬化の危険因子の一つに肥満が挙げられますが、特に内臓の周囲に脂肪が多く蓄積する内臓脂肪型肥満の場合は、高血圧、糖尿病、脂質異常症(高脂血症)といった動脈硬化のその他の危険因子を誘発する原因にもなります。

動脈硬化に限らずさまざまな生活習慣病の予防・改善に欠かすことのできない食事療法の基本中の基本が、自分にとっての適切なエネルギー摂取量を知り、過食を抑えて1日の摂取カロリーがオーバーしない食生活を意識し習慣化することです。

ただし、適切な摂取カロリー内であれば何を食べても良いと単純には考えず、食品に含まれる栄養素をバランスよく摂取するようにします。

1日当たりの適正なエネルギー量

1日当たりの適正なエネルギー量は人それぞれで異なりますが、身長から導き出す標準体重と日常的に体を動かす程度により決まる身体活動量を用いて計算することができます。

■目安となる1日当たりの適正なエネルギー摂取量の計算式

適正なエネルギー摂取量(kcal)=【標準体重】×【身体活動量】

■標準体重の計算式

標準体重(kg)=身長(m)×身長(m)×22

■身体活動量

軽い程度(25〜30kcal) 事務職などデスクワークが主な人、無職、専業主婦など
普通程度(30〜35kcal) 営業職、接客販売職など立ち仕事が主な人、工場や倉庫などで軽作業程度が主な人など
重い程度(35〜kcal) 力仕事の多い重労働が主な人

例えば、身長が170cmで仕事が営業職の人であれば、
1.7(m)×1.7(m)×22=63.58(kg)が標準体重となり、
63.58(kg)×30〜35(kcal)=1907〜2225(kcal)
が1日当たりのエネルギー摂取量の目安となります。※小数点以下は四捨五入で計算しています。

コレステロールを多く含む食品の摂り過ぎに注意する

コレステロールの多い食品コレステロールは体内で細胞膜の構成材料としてや、脂肪の消化・吸収に欠かせない胆汁酸の原料、また各種ホルモンの原料としてなど身体にとって必要不可欠な成分ですが、血液中に悪玉のLDLコレステロールが増え過ぎると血流が悪くなり血管壁に蓄積してしまいます。

また、蓄積したLDLコレステロールが活性酸素の作用により酸化されると“酸化LDL”となり、これが動脈硬化を促進させるより深刻なリスク要因となります。

コレステロール値の高い人における食事療法の基本のひとつとして、1日あたりのコレステロール摂取量を300mg未満に抑えることが推奨されており、それでも改善がみられない場合では1日あたり200mg未満に抑えるように強化されます。

コレステロールの多い食品(100gあたりの含有量)

食品 含有量(mg) 食品 含有量(mg)
スルメ(加工品) 980 やりいか 320
あん肝 560 カラフトシシャモ 290
すじこ 510 するめいか 270
いくら 480 シュークリーム 250
鶏卵(全卵) 420 豚レバー 250
鶏レバー 370 牛レバー 240
かずのこ 370 うなぎ(かば焼) 230
たらこ 350 バター(有塩) 210

飽和脂肪酸およびトランス脂肪酸を多く含む食品の摂り過ぎに注意する

飽和脂肪酸やトランス脂肪酸の多い食品飽和脂肪酸は肉類の脂肪や乳製品などといった動物性脂肪に多く含まれている脂肪酸で体にとって必要な栄養素ではあるのですが、食事から摂り過ぎるとLDL(悪玉)コレステロールや中性脂肪を増やすため動脈硬化の原因となります。

トランス脂肪酸はマーガリンやファットスプレッドなど加工油脂や、それらを原材料に使用している菓子類や加工食品などに多く含まれている脂肪酸で、トランス脂肪酸を摂り過ぎるとLDL(悪玉)コレステロールを増加させるだけでなく、HDL(善玉)コレステロールを減少させる作用があると報告されており、過剰摂取により動脈硬化のリスクを高めると考えられています。

飽和脂肪酸の多い食品

牛肉・豚肉の脂身、バター、チーズ、ベーコン、ソーセージ、生クリーム、チョコレートなど

トランス脂肪酸の多い食品

コンパウンドクリーム、ショートニング、マーガリン、ファットスプレッド、ビスケット類、パイ菓子、スナック菓子、フライドポテトやドーナツなどのファーストフード、インスタント・レトルト食品類など

※近年では健康への影響の懸念から、加工油脂製品を製造しているメーカーがトランス脂肪酸の低減化を進めており、あくまでも品目に関する目安であってメーカーや製品ごとで実際の含有量に差の開きが結構あります。

n-3系多価不飽和脂肪酸の多い食品を積極的に摂る

青魚n-3系多価不飽和脂肪酸は魚の油や植物油の一部に含まれる脂肪酸で、EPA(エイコサペンタエン酸)やDHA(ドコサヘキサエン酸)、必須脂肪酸であるα-リノレン酸(アルファ-リノレン酸)が代表的です。

n-3系多価不飽和脂肪酸には血液中の中性脂肪を下げる作用や、LDL(悪玉)コレステロールを減らしHDL(善玉)コレステロールを増やす働きがあり、血栓をできにくくするなど動脈硬化の予防効果があるとされています。

EPA・DHAの多い食品

マグロ、サバ、サンマ、ブリ、イワシ、アジなどの青魚

α-リノレン酸の多い食品

シソ油、えごま油、アマニ油(フラックス油)、なたね油、大豆油、クルミなど

食物繊維の多い食品を積極的に摂る

ワカメ食物繊維は水に溶ける水溶性食物繊維と水に溶けにくい不溶性食物繊維の2種類に大別され、それぞれ体内での働きに特長があるのですが、どちらの食物繊維も動脈硬化に限らず生活習慣病の予防・改善に役立つ栄養素なので、毎日の食事の際に意識して摂取するようにしましょう。

特に水溶性食物繊維は腸内でのコレステロール吸収を抑える他、コレステロールから合成される胆汁酸を体外に排泄する作用もあるので、新たに胆汁酸を合成しようと原料であるコレステロールが消費され、結果的に血中コレステロールが低下します。

不溶性食物繊維の多い食品はよく噛む必要があり必然的に早食いなどを防げるので、動脈硬化の危険因子の一つである肥満予防に繋がります。

水溶性食物繊維の多い食品

海藻類、こんにゃく、野菜類、熟した果物類

不溶性食物繊維の多い食品

穀類、豆類、芋類、きのこ類、野菜類、熟していない果物類

抗酸化物質を多く含む食品を積極的に摂る

野菜活性酸素などにより体内での酸化ストレスが増大すると、血管壁の中に入り込んだLDL(悪玉コレステロール)が酸化されて酸化LDLとなり、これが動脈硬化の元凶と考えられています。

ということで、コレステロールの増加を防ぐ食事に気をつけるとともに、酸化ストレスを抑制する作用を持った“抗酸化物質”を多く含む食品の摂取を増やすようにしましょう。

主な抗酸化物質とそれを含む代表的な食品

ビタミン類
ビタミンC 野菜、果物
ビタミンE アーモンドなどのナッツ類、植物油
カロテノイド類
β-カロテン ニンジン、ホウレンソウ、カボチャなどの緑黄色野菜
β-クリプトキサンチン 温州みかん、柿、パパイア
アスタキサンチン 鮭、イクラ、エビや蟹などの甲殻類
ゼアキサンチン パプリカ、トウモロコシ
フコキサンチン 昆布・ワカメ・ひじきなどの海藻類
リコピン(リコペン) トマトおよびトマト加工食品、スイカ
ルテイン ホウレンソウ、ブロッコリー、キャベツなどの緑黄色野菜
ポリフェノール類
アントシアニン 赤ワイン、ビルベリーやカシスなどのベリー類
イソフラボン 大豆および大豆食品
セサミン ゴマ
カテキン 緑茶、カカオ、リンゴ
クルクミン ウコン、しょうが
クロロゲン酸 コーヒー、ゴボウ
ケルセチン タマネギ(特に皮の部分に多い)
ルチン 蕎麦(特に韃靼ソバに多い)
レスベラトロール 赤ワイン、ブドウの果皮

大豆製品を積極的に摂る

豆腐大豆には必須アミノ酸が豊富に含まれている良質なタンパク質をはじめ、機能性に富んだ栄養成分がたくさん含まれており、動脈硬化のみに限らずさまざまな生活習慣病の予防や改善に役立ちます。

但し、血栓症の予防や治療として“ワーファリン(ワルファリン)”という抗凝血剤を服用されている場合は、大豆製品の中でも納豆の摂取は控える必要があります。納豆にはビタミンKが多く含まれているので薬の効力がなります。

動脈硬化の予防・改善に期待できる大豆成分の一例

大豆タンパク質 血中のコレステロール値を低下させる
大豆レシチン 血管壁にコレステロールが沈着するのを防いで動脈硬化を予防する
大豆サポニン 脂質の代謝を促進したり、活性酸素により中性脂肪やコレステロールなどの脂質が酸化するのを抑制する

糖質の摂り過ぎに注意する

ケーキ糖質が生体にとって必要不可欠なエネルギー源であることは疑う余地もないのですが、必要以上に摂取された糖質は中性脂肪となり体内に溜め込まれてしまい肥満の原因となります。

また、血液中のブドウ糖の濃度が高くなった状態である高血糖状態では、血管の中でブドウ糖とタンパク質が結合しやすくなり“糖化タンパク質”に変化します。糖化タンパク質はやがて老廃物“AGEs”となり、血管壁に付着して血管を傷つけるなど動脈硬化の原因となります。

注意するのは甘い食べ物だけではありません

炭水化物は“糖質”と“食物繊維”を加えたものの総称なので、単純に砂糖やお菓子・ジュース・果物など甘い食品の摂り過ぎだけに注意するのではなく、主食として食べることの多いご飯・パン・麺類などの摂取量も意識しておく必要があります。

塩分の多い食事を控える

塩塩分を摂り過ぎると高血圧を引き起こして血管を圧迫するので、血管を傷つけ動脈硬化を起こします。

普段の食事で使用することの多い醤油、味噌、ソース、固形ブイヨンなどといった調味料は塩分が多いので極力控えて、減塩タイプのものを使ったり、香辛料などを上手に使ったり、鰹節や昆布といった出汁の旨みを効かせるといった工夫を取り入れるようにしてください。

日本動脈硬化学会による『動脈硬化性疾患予防ガイドライン2012年版』では、
“1日あたりの食塩摂取量は6g未満を目標値”としています。

食塩相当量とナトリウム量

市販されている調味料をはじめ加工食品の成分表には、“食塩相当量”として表記されているモノもありますが、 商品によっては“ナトリウム量”として表記されているモノもあります。

この場合、ナトリウム量から食塩相当量に換算して考慮する必要があります。

■ナトリウム量から食塩相当量への計算式

食塩相当量(g)=ナトリウム量(g)×2.54
または、
食塩相当量(g)=ナトリウム量(mg)×2.54÷1000

食品に含まれる塩分の参考値

食品 目安の分量 塩分含有量
ロースハム 1枚(約20g) 約0.5g
プロセスチーズ 1個(約20g) 約0.6g
生食ちくわ 1本(約25g) 約0.6g
食パン 1個(6枚切りの1枚) 約0.8g
真アジの干物(生) 100g 約1.7g
梅干し 1個(約10g) 約2.2g
カップヌードル 1食(77g) (麺・かやく)約2.8g
(スープ)約2.3g

アルコールは適量を守り、過剰摂取を控える

ビールアルコール摂取量に比例して肝臓での中性脂肪の合成が増加しますし、アルコールには食欲を増進させる作用があることから、飲酒の際についつい食べ過ぎてしまい摂取カロリーが高くなる傾向になりやすいです。

ただ、アルコールの摂取によりHDLコレステロール(善玉コレステロール)を増加させる作用があったり、お酒が好きな人にとっては精神的なストレス解消になる場合もあるので、あくまでも適量を守り週のうちに何日かは休肝日を設けるようにし飲み過ぎに注意しましょう。

日本動脈硬化学会による『動脈硬化性疾患予防ガイドライン2012年版』では、
“1日あたりのアルコール摂取量を25g以下に抑える”ことを推奨しています。

アルコール量の計算式

純アルコール量(g)=お酒の量(ml)×{アルコール度数(%)÷100}×0.8

例えば、アルコール度数が5%のビール500mlであれば、
500(ml)×{5(%)÷100}×0.8=20(g)という計算になり、
純アルコール量に換算すると20gとなります。

純アルコール量25gを各種お酒の量に換算すると

お酒の種類 アルコール度数 容量
ビール 5度 約625ml
缶チューハイ 7度 約446ml
ワイン 12度 約260ml
日本酒 15度 約208ml
焼酎 25度 約125ml
ウイスキー、ブランデー 40度 約78ml

食事療法の基本はバランスの良い食事を心がける

動脈硬化を予防・改善するために過食を抑えることや、動物性脂肪・糖質・塩分などの摂り過ぎに注意する必要があるのは当然ですが、その一方で良いとされる食品ばかりを過剰に摂取すればいいというワケでもなく、あくまでも栄養素が偏らずにバランスの良い食事を規則正しく摂るように意識することが大切です。

持病がある人などは医師との相談の上で

聴診器何らかの持病がある人や常時服用している薬がある人などであれば自己判断せず、かかりつけの医師に相談しながら食事療法を始めることが重要です。

例えば、腎臓病を患っている人ではタンパク質やカリウムの制限があったり、血栓を予防する“ワーファリン”という薬を服用されている人は、薬の効果を弱めてしまうビタミンKを多く含んだ納豆やクロレラ食品、青汁の摂取を控えるように指導されます。

ニュース・トピックス

【がんに罹るリスクをチェック!】
日本人の死因で最も多いのが「がん」であることはほとんどの方が認知されていると思いますが、2011年の死亡総数の内、がんで亡くなった人の割合が28.5%ということで、死亡原因の約3割も占めているわけです。これほどまでの割合となると決して他人事ではないと思われます。

がんは早期発見・早期治療が欠かせないと言われますので、定期的な検診を受けることが重要であることは分かっていても、なかなか実践できていない人も多いのではないでしょうか?

下記に紹介するサイトでは、40歳から69歳までの人が対象となっていますが、今後10年の内にがん、および心臓病や脳卒中などの病気に罹るリスクを算出してくれるコンテンツがありますので、チェックされてみてはいかがでしょうか?

国立がん研究センターがん予防・検診研究センター『がんリスクチェック』